【幼少期から異彩を放ち、特に思春期には類まれな独創性を発揮して周囲を驚かせた】こんな書き出しでウィキペディアが始まる人物、それはリュック・ベッソン。さらにその思春期に【暇つぶしで書き始めた小説はのちに「フィフス・エレメント」(97)の作品世界として活かされている】そうだ。
映画監督の初期プロフィールとしてはかなりの完成度である。オレはリュック・ベッソンがブレイクする過程をリアルタイムで接した世代だ。日本での初公開作品「サブウェイ」(85)は、まだ判型が小さいころの『宝島』で“ヌーヴェルヴァーグ以降の新しい波”と紹介されていた。本格的なブレイクは1988年に公開された「グラン・ブルー」(公開当時は「グレート・ブルー」)であろう。ほぼ同時期に公開されたジャン=ジャック・ベネックスの「ベティ・ブルー」と共に、主に女性の支持を得た。あのころの気取った女はみんな「グラン・ブルー」と「ベティ・ブルー」が好き、って言ってたよ。しかし思い返せばあの時代はまだ若い女性がフランス映画を嗜むカルチャーがあったのだ。
そして1992年の「ニキータ」、1994年の「レオン」の大ヒットで、リュック・ベッソンは35歳にして世界のトップ監督へと躍り出る。ちなみに「レオン」の脚本はベッソンが2日で書き上げたそうだが、「グラン・ブルー」「ニキータ」「レオン」が、今観ても色褪せぬ傑作であることは誰もが認めるところだろう。以降、ベッソンは監督業と並行してプロデュース作品を多く手がけるようになるが、このあたりから微妙な存在になっていく。
件のガキの頃に暇つぶしで書いた小説が元ネタになっている「フィフス・エレメント」は、広げた風呂敷が大き過ぎてなんだかよくわからない内容だったし、日本を舞台にして広末涼子が出演した「WASABI」( 01)は、はっきり言ってスットコドッコイな映画だった。その他のフィルモグラフィを見てもほとんどが「なんだかなあ……」な印象である。ブランドが確立し、仕事の幅を広げ、内容よりも商売重視になり、作品が薄味になっていくのは映画監督あるあるかもしれないが、ベッソンは初期作品が際立っていたので、その落差が大きかった……ってのは、オレの勝手なイメージなのかもしれない。
実際、シリーズ化しているプロデュース作品「TAXi」(97-07)「トランスポーター」(02-15)は世界中で大ヒットしているし、監督としての最新作「LUCY/ルーシー」(14)だって悪くはなかった。ジェット・リーの「ダニー・ザ・ドッグ」(05)も、ジョジョの荒木飛呂彦先生がベスト・オブ・ベスト映画としている「96時間」(08、共にベッソン製作・脚本)も良かった。あれ? ひょっとしてオレが勝手にベッソン映画を食わず嫌いになっているだけ?
それを確認すべく、9月のWOWOWシネマ「TAXi」一挙放送と「トランスポーター」全3作&リブート版一挙放送を観たいと思っています!!
ちなみに10月1日公開の拙作映画「SCOOP!」は、「レオン」からインスパイヤされたキャラクターやシーンが多々ありますー。ご覧あれー。
放送スケジュール
■9/18(日) 12:00「TAXi」 13:45「TAXi③」 15:15「TAXi④」
■9/19(月・祝) 15:30「トランスポーター」 17:15「トランスポーター2」
19:00「トランスポーター3 アンリミテッド」 21:00「トランスポーター イグニション」
加入・お問い合わせ 0120-808-422(9:00〜21:00)/月額視聴料2,300円(税込2,484円) ※加入料はかかりません。
本連載が掲載されている『キネマ旬報』
キネマ旬報 2016年9月上旬号
大根仁監督 最新作情報
「SCOOP!」 10月1日(土)ロードショー!
あらすじ
フリーカメラマンの都城静(46)は、かつて数々の伝説的スクープをモノにしてきたが、現在は芸能スキャンダルを中心に追うパパラッチ。そんな彼が、写真週刊誌「SCOOP!」の新人記者とタッグを組む中で、スクープを獲得していき、次第に大きな事件を追う事になる…
記事に登場する作品情報
▼「TAXi」
▼「TAXi③」
▼「TAXi④」
▼「トランスポーター」
▼「トランスポーター2」
▼「トランスポーター3 アンリミテッド」
▼ 「トランスポーター イグニション」