最近CMの仕事をしているのだが、そういえば昔に比べハリウッドスターが日本のCMに出演することが少なくなった。バブル時代にはアーノルド・シュワルツェネッガーやハリソン・フォード、レオナルド・ディカプリオ、ブルース・ウィリス、ブラッド・ピットなどが、おそらく小遣い稼ぎ目的で出演しまくっていたが、景気の後退と共にキャスティングできなくなったのだろう。
そんな中、トミー・リー・ジョーンズだけはサントリーの缶コーヒーBOSSのメインキャラクターとしてずーっと出演し続けている。このシリーズが始まったのは2006年で、【宇宙人ジョーンズの地球調査】というコンセプトが掲げられており、おそらくこれは「メン・イン・ブラック」のパロディとしてインスパイアされたのだろう。放送が始まったころは視聴者もそういう受け止め方をしていたはずだが、10年経った今はそんなことはすっかり忘れている。
役者としてのトミー・リー・ジョーンズを知らない世代は「日本に住んでいる外人のおじさん」としか捉えていないのではないだろうか? オレ自身、「ノーカントリー」(07)「キャプテン・アメリカ」(11)「ジェイソン・ボーン」(16)などスクリーンでトミー・リー・ジョーンズを見ると妙な違和感というか親しみというか、ハリウッドスターというよりも「BOSSのジョーンズが米映画に出ている」というアングルで見てしまう。
CMのプロダクションマネージャーに聞いたのだが、実際にトミー・リー・ジョーンズは日本が大好きらしく、ほとんどのハリウッドスターがアメリカでの撮影を希望するのに、トミーはスケジュールが合う限り、出来るだけ日本に来て撮影をしたがるそうだ。2012年の「メン・イン・ブラック3」のワールドプロモーションでは、唯一日本だけ参加し「私は本当に日本が大好きで、日本に来るのはいつも幸せ。本当に美しい国で、私にとっては第二の故郷」と、とてもリップサービスとは思えない心のこもった言葉を残している。
そんなトミーが日本で最初に強い印象を与えた映画といえば「逃亡者」(93)だろう。主役のハリソン・フォードを追う連邦保安官補を演じたトミーは、むしろ主役を食ってしまい、スピンオフ映画「追跡者」(98)では主役に抜擢された。下積み時代が長く、遅咲きのスターというところもハリウッドスターらしからぬ親しみを感じる所以なのだろう。最近のBOSSのCMはタモリがメインとなり、トミー・リー・ジョーンズは脇役に回ってしまっているが、やはりこのCMのキャッチコピー『このろくでもない、すばらしき世界』は、トミー・リー・ジョーンズにこそ合っているような気がする。WOWOWでは2017年1月4日に「逃亡者」「追跡者」を一挙放送。日本でいちばん馴染みの深いハリウッドスター、トミー・リー・ジョーンズの出世作をじっくりと嚙みしめたい。
放送スケジュール
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【「逃亡者」「追跡者」一挙放送】
■ 「逃亡者(1993)」2017年1月4日(水)18:45
■「追跡者(1998)」2017年1月4日(水)21:00
加入・お問い合わせ 0120-808-422(9:00〜21:00)/月額視聴料2,300円(税込2,484円) ※加入料はかかりません。
本連載が掲載されている『キネマ旬報』
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大根仁監督 最新作情報
「SCOOP!」
あらすじ
フリーカメラマンの都城静(46)は、かつて数々の伝説的スクープをモノにしてきたが、現在は芸能スキャンダルを中心に追うパパラッチ。そんな彼が、写真週刊誌「SCOOP!」の新人記者とタッグを組む中で、スクープを獲得していき、次第に大きな事件を追う事になる…