最終回 日本アカデミー賞のこれから

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「誘拐報道」
©日本テレビ・東映

先日、日本アカデミー賞に行ってきた。と、書けば「お前ノミネートされていたっけ?」とツッコミが入ることだろう。ええ、されていませんよ。2016年公開の対象作品「SCOOP!」は、作品賞にも監督賞にもカスリもしませんでしたよ。呼ばれてもいないパーティーに行くほど無粋なものはないことくらいもわかってますよ。でもね、助演男優賞でリリー・フランキーがノミネートされたの! だから行く権利はあるの! あと、知り合いの俳優・女優がたくさんノミネートされていたし、会場の新高輪プリンスも事務所の近所だから散歩がてら遊びに行ったの!!

いやしかし、今年の日本アカデミー賞は面白かった。2016年は近年稀にみる邦画豊作の年と言われたが、「シン・ゴジラ」「君の名は。」のメガヒット作品だけではなく、「64」「怒り」などの重厚な作品も、「湯を沸かすほどの熱い愛」「聖の青春」みたいな良作もノミネートされた。個人的には「この世界の片隅に」が最優秀アニメ作品賞を獲ったことと、最優秀音楽賞がサカナクションからRADWIMPSに引き継がれたということに、希望を感じた。だが、どうにも解せなかったのは、リリー・フランキーが最優秀助演男優賞を獲れなかったこと……ではなく、賞自体のセレモニーとしての鈍重さである。

モテキ」「バクマン。」で参席した時も感じたことだが、日本のエンタメ業界もこれだけ進化してきたのに、なぜ日本映画最大の祭典と呼ばれる日本アカデミー賞は、あんな田舎の結婚式みたいなダサいことをやっているのか? 作品紹介~受賞者インタビュー~最優秀賞発表の繰り返しの構成はいくらなんでもかったるい。米アカデミー賞を倣えというつもりはないが、もう少しエンタテインメント性とショー要素があっても良いんじゃないか? 日本アカデミー賞に足りないものは、音楽とユーモアである。今年だったら、せっかくRADWIMPSがいるんだから演奏させりゃいいんだよ。スベるかもしれないけど、ゴジラの着ぐるみ呼べばいいんだよ。あと司会ね、西田敏行さんの功績はもちろんリスペクトするが、そろそろ交代の時期だろう。後任はズバリ大泉洋だ。ヤツだったら今年の米アカデミー賞で完璧な仕切りを見せたジミー・キンメルに負けない司会ができる。あとそもそも会場がダサい。ホテルの大広間なんて……いや、これくらいにしておこう。とにかく言いたいことは、監督としての賞はいらないから、オレに日本アカデミー賞の演出をやらせて欲しい! ということだ。絶対に面白いショーにしてみせるから!!

というわけで今月のWOWOWお薦めシネマは【特集:日本映画80年代傑作選】の「誘拐報道」です。長らくソフト化されていなかったので“幻の名作”扱いされていたけど、1982年の日本アカデミー賞で、萩原健一が優秀主演男優賞を、小柳ルミ子が最優秀助演女優賞を、姫田真佐久カメラマンが最優秀撮影賞を獲った大傑作です! ぜひご覧あれ!! あ、この連載は今回が最終回です。1年間お付き合いいただき、ありがとうございました!!!

 

 

特集:日本映画80年代傑作選】※WOWOWシネマ

■4月17日(月)18:15「誘拐報道

■4月18日(火)19:00「俺っちのウエディング

■4月19日(水)18:45「逃がれの街

■4月20日(木)19:00「ウホッホ探検隊

■4月21日(金)19:00「会社物語 MEMORIES OF YOU

WOWOW ご加入・お問い合わせ 0120-808-422(9:00〜21:00)/月額視聴料2,300円(税込2,484円) ※加入料はかかりません。

本連載が掲載されている『キネマ旬報』

11B_COVER

キネマ旬報 2017年 4月上旬号

記事に登場する作品情報

SCOOP!
(2016)

シン・ゴジラ
(2016)

君の名は。 (2016)

64
(2016)

怒り
(2016)

湯を沸かすほどの熱い愛
(2016)

聖の青春
(2016

この世界の片隅に
(2016)

モテキ
(2011)

バクマン。
(2015)

大根仁監督 最新作情報

SCOOP!

あらすじ

フリーカメラマンの都城静(46)は、かつて数々の伝説的スクープをモノにしてきたが、現在は芸能スキャンダルを中心に追うパパラッチ。そんな彼が、写真週刊誌「SCOOP!」の新人記者とタッグを組む中で、スクープを獲得していき、次第に大きな事件を追う事になる…

■2017年9月公開予定

奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール

■2017年8月18日公開予定

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?(2017)」(脚本)