九作目 実写とアニメの境界を越えていく……

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「ルパン三世 カリオストロの城」 原作:モンキー・パンチ ©TMS

「ルパン三世 カリオストロの城」 原作:モンキー・パンチ ©TMS

 

遅ればせながら「この世界の片隅に」をやっと観た。元々原作の大ファンだし、映画が公開されてからの大評判に、観る前は相当ハードルが上がっていたのだが、そのハードルを楽々とクリアするどころか、想像を遥かに超える出来栄えに、心底感動した。特に物語後半の“右手”のシーンは、アニメでどう表現するのか期待と不安が半々だったのだが、まさかあんな……スクリーンを観ながら全身が震えるという体験は、久しぶりだった。昨年のアニメ映画といえば「君の名は。」の超メガヒットが最大のトピックとしてあげられるが、個人的にはクラウドファンディングという製作システムも含めて「この世界の片隅に」の方が事件としては大きいと感じた。2016年は邦画の当たり年と言われ、確かにちょっとどうかと思うほどクオリティの高い邦画が多かったが、映画ファンのみならず一般客まで巻き込んだという点においては、「シン・ゴジラ」「君の名は。」「この世界の片隅に」この三本が、邦画シーンを牽引したと言ってよいだろう。

そして思う。庵野秀明新海誠片渕須直というアニメ監督たちによって、邦画界の主権は実写からアニメへと大政奉還が成されたのではないかと。興行成績だけでいえば、それはとっくの昔に済んでいたのかもしれないが、「君の名は。」がデートムービーとして成立し、「この世界の片隅に」が高年齢層にまで浸透したのは、もはやアニメファンや親子連れのみならず、アニメ映画が一般映画として確立した証であろう。

長年、ジブリ映画が耕してきた土壌に豊潤な作品が実り、一般客も実写とアニメの分け隔てなく観賞するようになったのだ。では、そのジブリ……宮崎駿映画といってよいと思うが、宮崎駿が最初に蒔いた種はズバリ「ルパン三世 カリオストロの城」(79)であろう。完璧なキャラクター造形、緩急のバランス展開、奇想天外なアクション、“アニメは子供が観るもの”という価値観が最初に崩れたのは、間違いなく「カリ城」からだ。噂レベルだがスティーヴン・スピルバーグはカンヌ国際映画祭で「史上最高の冒険活劇の一つ」と評したという。オレは公開時小学5年生で友人と連れ立って観に行ったのだが、観客に大人が多かったことをよく覚えている。そして映画に興奮しているのはむしろ大人たちの方だったことも。

邦画界にとっての黒船は海外からではなく、アニメ界からやって来たのだ。「アニメは映画なのか?」という議論は、もはや不毛を通り越してナンセンスですらある。では、実写邦画を作っている我々はアニメに対して、どう渡り合っていくのか……?

そのヒントを探るべく、WOWOWで2月に放送される【「銭形警部」放送記念!ついに「カリオストロの城」登場!「ルパン三世」計24時間放送】を観る……いや、さすがに全部観ている暇はないなあ……それにしても銭形を鈴木亮平が演じるって最高だな。邦画界の未来は、実写とアニメの垣根を越えられる役者・鈴木亮平にかかって……ねえか。でも楽しみ!!

 

『連続ドラマW 銭形警部 漆黒の犯罪ファイル』

『連続ドラマW 銭形警部 漆黒の犯罪ファイル』

「銭形警部」放送記念!ついに「カリオストロの城」登場!「ルパン三世」計24時間放送※全てWOWOWプライム

★2月12日(日)

■14:30「ルパン三世 くたばれ!ノストラダムス

■16:15「ルパン三世 バビロンの黄金伝説

■18:00「ルパン三世 ルパンVS複製人間

■19:45「ルパン三世 カリオストロの城

★2月19日(日)

■15:15「ルパン三世 DEAD OR ALIVE

■17:00「ルパン三世vs名探偵コナン THE MOVIE

■19:00「LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標

★2月14日(火)

■25:30『ルパン三世(PART1)』(全23話) [第1話は無料放送]

■WOWOW×日テレ×Hulu共同製作ドラマ『連続ドラマW 銭形警部 漆黒の犯罪ファイル』(全4話)2月19日(日)22:00より第1話放送

加入・お問い合わせ 0120-808-422(9:00〜21:00)/月額視聴料2,300円(税込2,484円) ※加入料はかかりません。

本連載が掲載されている『キネマ旬報』

11B_COVER

キネマ旬報 2017年 2月上旬号

記事に登場する作品情報

この世界の片隅に
(2016)

君の名は。
(2016)

シン・ゴジラ
(2016)

ルパン三世 カリオストロの城(1979)

大根仁監督 最新作情報

SCOOP!

あらすじ

フリーカメラマンの都城静(46)は、かつて数々の伝説的スクープをモノにしてきたが、現在は芸能スキャンダルを中心に追うパパラッチ。そんな彼が、写真週刊誌「SCOOP!」の新人記者とタッグを組む中で、スクープを獲得していき、次第に大きな事件を追う事になる…